AI活用のWebサイト制作・保守に潜む4大リスク|自社制作のリスクマネジメント

「ビジネス最適化の欠落」「責任所在」「属人化」「思考停止」のリスクと、その具体的回避策のまとめ。

投稿日:2026/09/11
最終更新日:2026/09/11

「コーディングや画面作成はAIで効率化できるので、社内で内製化したい」

「AIを使って自社でWebサイト制作や日々のWebサイト保守を行いたい」

近年、業務効率化やコスト最適化を目的とした「AIによるWebサイト制作・Webサイト保守の自社化(内製化)」を検討する企業が急速に増えています。ChatGPTやClaudeをはじめとする生成AIの進化により、プログラミングや文章作成、デザイン制作のハードルが劇的に下がったことは紛れもない事実です。 

結論からお伝えすると、私たちはAIによる内製化や業務改善を大賛成していますし、否定するつもりも一切ありません。実際に弊社ビークリエイトでも、Claudeをプラットフォームとして全社的に導入し、Web制作や保守運用の現場で高度活用しています。

しかし、AIを日常的に運用しているからこそ、リスク管理を考える管理職や経営層の方々に強くお伝えしたい点があります。

それは、「社内ツールとしての実験的なAI利用」と「自社ビジネスや顧客に向けた本番プロダクト・商用コンテンツ制作」を混同してしまい、組織的なリスク管理が置き去りになっているケースが少なくないという現実です。

単に「コードを生成できる」という状態から一歩進み、企業として安全かつ確実に成果を出し続けるために、管理職が把握しておくべきリスクとガバナンスの視点を整理します。

リスク1|AI依存がもたらす「3つの構造的リスク」と管理職の視点

管理職は、AIが生成するアウトプットの「速さ」ではなく、その裏にある「ビジネス的な妥当性」と「責任構造」を管理する必要があります。

リスクの本質具体的な事象(罠)管理職が見るべきポイント
①ビジネス目的への最適化スキップAIは指示通りのコードを出すが、「自社のKPI(問い合わせや売上)に最適か」は判断しない。成果の出ない「自己満足のWebサイト」 が完成する。その設計や機能は、ユーザー導線(UX)や事業課題の解決に基づいているか?(批判的検討)
②最終責任の所在と「説明責任」の破綻AIが生成したプログラムに重大な脆弱性や権利侵害、誤りがあった際、「AIがやった」は通用しない。トラブル時に誰も責任を取れない。万が一のセキュリティ事故やWebサイト停止時、誰が責任を負い顧客へ説明する体制か?(説明責任)
③開発・保守プロセスのブラックボックス化・属人化特定の社員がAIでコードを書き、開発・保守環境(Docker等)や管理履歴(Git等)が未整備。担当退職により、個人依存で作られたコードを外部制作会社はもちろんのこと社内でも引き継ぐことができず修正不能なシステムだけが残る。そのWebサイトは、社内の誰でも安全に保守・復旧できる構造か? (技術的負債・属人化の解消)

リスク2| 華やかさの裏に潜む「思考停止」と知識の形骸化

AIを活用したWebサイト制作・Webサイト保守において、セキュリティ以上に懸念されるのが「人間側の思考プロセスの停止」です。 

社内で提出されるAI生成の要件定義書や画面設計、保守用の修正コード。表面上は綺麗に動いていても、少し深掘りして「なぜこの修正を行ったのか?」「セキュリティ上の意図は?」と突っ込んでみると、担当者が内部構造を把握しておらず、何も答えられない――そうした事例が発生しています。

  • 「成果・KPIを達成できるか」の検証スキップ:「AIが出した構成案だから正解だろう」と思い込み、ユーザー心理や運用・保守負荷から逆算して検証するプロセスを放棄してしまう。
  • 自社ノウハウ・保守感度の衰退:長年の現場経験があれば気づくはずの「不自然さ」や「リスク」を、AIの洗練された文章やコードに圧倒されて見過ごしてしまう。

AIが出したアウトプットに対して「本当にこれで良いのか?」と問う担当者の思考回路が止まったとき、組織に残るのは「見た目は軽快だが、中身スカスカな無責任の産物」でしかありません。

リスク3|リスク評価マトリクス:体制別「発生度×影響度」

社内の体制やリテラシー、外部との連携状態によって、リスクの発生確率(発生度)と事業への損害(影響度)は大きく変動します。

評価基準:発生度(リスクが起きる確率)/ 影響度(損害の大きさ) 各5段階

潜んでいるリスクビギナー層
(手探りでコピペ利用)
個人依存層
(特定社員に任せ切り)
効率重視層
(社内推奨派)
★成熟・強固層
(仕組み構築・専門家伴走)
思考プロセスのスキップ
(検証不足のWebサイト)
発生度:5
影響度:4
発生度:4
影響度:4
発生度:4
影響度:4
発生度:★1
影響度:★2
自社ノウハウ・感度の低下
(制作・保守チームの思考停止)
発生度:5
影響度:3
発生度:4
影響度:4
発生度:3
影響度:4
発生度:★1
影響度:★1
説明責任の破綻・論理崩壊
(脆弱性・障害児の信用失墜)
発生度:5
影響度:5
発生度:4
影響度:5
発生度:3
影響度:4
発生度:★1
影響度:★1
運用環境のブラックボックス化
(業務停止・手詰まり)
発生度:4
影響度:4
発生度:5
影響度:5
発生度:3
影響度:4
発生度:★1
影響度:★1

「個人依存層」や「効率重視層」は、一見AIで爆速制作・保守ができているようで、セキュリティ事故時の説明責任破綻や属人化のリスクを抱えています。 

これに対し、制作・保守フローやセキュリティ基準が仕組み化され、外部のWeb制作・Webサイト保守パートナーなどの専門家がサポートしている「成熟・強固層」は、AIの利便性を享受しつつ、すべてのリスクを極小化(発生度・影響度1〜2)できています。

リスク4| 管理職が講じるべき「AIガバナンスとリスク対応策」

リスクを恐れてAIによるWebサイト制作やWebサイト保守を禁止にする必要はありません。管理職に求められるのは、「AIに何を任せ、人間がどの品質と責任を担保するか」のガイドライン策定です。

ガバナンスの視点具体的な対応策(ガイドライン)
① コードレビューと設計・保守検収の義務化AIが生成したコードやテキストをそのまま本番公開することを禁止する。 「セキュリティ要件を満たしているか」「UI/UX設計に適しているか」を人間のプロの目でレビュー・テストするステップを必須化する。
②「制作・保守プロセス」のレビュー体制単に「サイトができた・更新できた」という報告ではなく、「どのような構造か」「AIの出力をどう検証して採用したか」という人間の判断根拠を確認する。
③ 本番運用における「責任と安全基盤」の明文化商用成果物(自社Webサイト、顧客向けWebサイト、システム等)に関しては、専門知識を持つ人間が最終チェックを行い、責任を明確化する。 Docker等による開発・保守環境の一元化と、Git等によるソースコード管理を徹底し、ブラックボックス化を未然に防ぐ。

まとめ|道具の進化にあわせて、管理者の「マネージメント力」をアップデートする

AIは、業務の速度を劇的に高めてくれる「極めて優秀なアシスタント」です。

しかし、管理職やチーム側が思考を止め、指示を出して出てきたものをそのまま流すだけになってしまえば、どれだけ高度なAIを導入しても企業価値の向上には繋がりません。

表面的なアウトプットの速さに目を奪われず、その裏にある「目的への最適化・安全な基盤・最終的な責任構造」を管理職がコントロールすること。

AI活用で誰でもWebサイト制作や保守ができる時代だからこそ、リスクマネジメントを担う意思決定層の「本質を見抜く判断力」が、かつてないほど重要になっています。

著者

Kowatari

Tetsuya Kowatari(代表取締役/ディレクター)

大手企業の新事業・新商品開発コンサルティングを経て、2004年に独立。これまで10,000件を超える開発案件に現場の最前線で携わってきた。現在はAI / DX支援からこども向けプログラミングスクール事業まで、幅広く事業を展開中。長年の現場経験で培ったモノづくりの視点をもとに、時代に合わせた本質的な価値づくりと挑戦を続けている。

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